31回目を迎え、今年から大会名に宇都宮を冠した「宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース」。日本で唯一、国際自転車競技連合(UCI)がワールドツアーに次ぐ“プロシリーズ”に認定した、アジア最高位のワンデイロードレースを開催する大会です。今年も10月18日(金)から20日(日)の3日間にわたり開催され、世界の第一線で活躍する選手たちの真剣勝負を間近で観ようと、延べ13万人を超えるファンが宇都宮市に集結しました。

今回は、2日目の「宇都宮ジャパンカップクリテリウム」を取材しました。宇都宮が誇る年に一度の「自転車の祭典」の魅力や熱気をお届けします。

宇都宮市民に愛される地元チーム「宇都宮ブリッツェン」

10月19日(土)の宇都宮市は気温22度の曇り空。前日の大雨の影響で湿度80%を超える蒸し暑さでしたが、コース沿いは朝から、午後のレースを心待ちに集まった多くの観客で賑わっていました。参加チームは全20チーム。応援するチームのユニフォームやグッズを身につけた色とりどりのファンが集うなか、宇都宮市をホームとして活動する、日本初の地域密着型プロサイクルロードレースチーム「宇都宮ブリッツェン」が圧倒的人気を誇っていました。レース前に、キャプテンの谷順成選手と、注目株の沢田時選手にレースへの意気込みを伺うことができました。

快く取材に応じてくれた谷順成選手(左)、沢田時選手(右)

谷順成選手:「宇都宮ジャパンカップは、僕ら選手にとって特別な大会だけでなく、宇都宮市民の皆さんにとっても1年間の中で大きなイベントの一つです。今年は大会に“宇都宮”と付いたこともあり、地元チームとしてがんばらないといけないと思っています」

沢田時選手:「地元の方々にブリッツェンを知っていただいて、僕らの名前を読んで応援してくださるのがうれしいです。声援を力に変えることができるのが僕らのチームだと思うので、力強い走りで応えていきたいと思います」

3日目のロードレース(森林コース)についても「普段から練習している地元のコース。どの出場選手よりも僕たちが熟知し、一番走り込んでいるコースなのでがんばります!」と気合十分な両選手でした。

世界トップ選手も集結。宇都宮の街を激走する

数十センチの間隔でひしめき合う選手たち

二荒山神社前をスタート&フィニッシュとする、宇都宮市大通り周回コース「宇都宮ジャパンカップクリテリウム」は、ハイスピードな展開が見どころ。15時40分、スタート直後から海外勢が猛スピードで逃げ始め、レースはすぐにハイスピードな展開に。レースは先頭の海外勢の逃げ切り展開で幕を閉じました。

大人から子どもまで楽しめる
参加できるイベントも充実

子どもたちもアツい走りを見せてくれたキックバイク大会

オリオン通り中ほどにあるオリオンスクエアでは、例年大人気の子どもたちのキックバイク大会も開催されていました。コースを間違えてしまう子、途中で止まって手を振っている子など、微笑ましい場面もありましたが、コーナリングで華麗なターンを決める本気の走りで魅せてくれた子もいました。ご家族にお聞きすると、競技歴1年ながら全国大会にも出場したそう。もしかしたら、将来有望なレーサーの卵かもしれません!

女子選手たちがクリテリウムで競い合う
ガールズケイリンスペシャルレースも!

クリテリウムの前には、「BMXパフォーマンス」や若手による「ホープフル クリテリウム」、女子の競輪選手たちによる「ガールズケイリン スペシャルレース」など関連イベントが行われ、会場を盛り上げていました。今回は、ガールズケイリンから初参加した、片岡美奈選手と普久原美海選手にレースに対する思いなどを伺いました。

片岡選手:「競輪とロードレースでは自転車も違うので、戸惑いもありましたが、楽しみです。普段はバンクでしか見てもらえない走りを、もっと間近で見ていただけるので、これを機にガールズケイリンにも興味を持っていただけたらと思います」

普久原選手:「小さい頃から見てきた大会に自分が参加することになり、不思議な気持ちです。希少な機会なので、自分たちも楽しみながら、お客さんにも楽しんでいただけたら、と思います」

ファンにはたまらない!今大会ならではの選手との距離

宇都宮ジャパンカップの魅力は、何と言っても「選手との距離の近さ」。レース前に行われるパレードはもちろん、タイミングが合えば、選手と記念写真を撮ったり、サインをもらったりしているファンの姿もたくさん見かけました。ファンの方々にお話を伺うと、お目当てはさまざまでしたが、皆さんが「自転車の祭典」として宇都宮ジャパンカップを楽しみ、愛していることを強く感じました。

JKA補助事業とともに熱烈に愛され続ける「自転車の祭典」

また、宇都宮ジャパンカップサイクルロードレースを運営する宇都宮市役所、スポーツ都市推進課スポーツ戦略室の室長である杉山敬宏氏にも、大会開催の意義や魅力などを伺いました。

杉山敬宏氏:「今年31回目となるアジア最大のロードレースが、これだけ長く開催し続けられているのはJKAの補助事業あってこそです。多くの方が沿道で、安全に間近で見られる環境整備に使われる補助金をはじめ、“クリテリウム・スペシャルライダース”への有名競輪選手の参加やガールズケイリン・スペシャルレースの開催など、大会の運営に多岐にわたりご協力をいただいています。

今大会は、2日間、それぞれのコースに違った良さがあり、明日開催される宇都宮市森林公園でのロードレースは、本場ヨーロッパのロードレースの雰囲気を、おそらく日本で唯一味わえる大会だと思います。「アレ!アレ!」と地元の方々がフランス語で声援を送ったり、道路にチョークでメッセージを書いたり、本場の楽しみ方ができるのが魅力です」

大会開催が、いろいろな街づくりにつながっています。一番は、地域活性化や経済効果。昨年はクリテリウムだけで5万5000人、ロードレースの日は大雨にも関わらず7万4000人の来場がありました。

杉山敬宏氏:「熱烈なファンの方々が、日本中、世界中から宇都宮市に足を運び、餃子や最近開通したLRT(ライトライン)を楽しまれたり、近隣に観光に訪れたりすることによる経済効果は大きいです。大会開催を通して、地元の方々に「私たちの街は国内最高峰のレースを開催している」と誇りに思ってもらいつつ、国内最高峰の自転車レースの開催都市としてのブランド力、知名度を高めていきたいです」

1日中、街全体がジャパンカップ一色に染まっていた宇都宮。地元に根付いたレースとして、2世代、3世代に渡って家族で応援している方々も多くいらっしゃいました。レースでありながら、順位よりもそこに参加していることに意義があるような祝祭感にあふれ、年に一度の「自転車の祭典」を選手も観客も一体となって楽しんでいる様子が印象的でした。