人生100年時代を健やかに生きていくため、改めて学校給食を通じた食育が注目されています。栄養バランスの良さや全国的な実施など、世界的に見てもレベルが高い日本の学校給食。その重要性を周知させるために毎年開催されているのが、「全国学校給食甲子園」です。第19回大会となった今回は全国各地から1,051件※にもおよぶ応募があり、厳しい予選を突破した学校(施設)が各地区の最終代表に選ばれました。
決勝の舞台ではどのような戦いが繰り広げられ、栄冠はどのチームの手に渡ったのか。本記事ではその様子と、運営に携わる方々の大会への思いをお届けします。

※献立の応募総数

「全国学校給食甲子園」公式ホームページはこちらから

1,051件の応募から選ばれた12代表の、手に汗握る調理対決

12月8日(日)、決勝当日。真冬の冷たい空気の中、会場となる女子栄養大学・駒込キャンパスの調理室は選手たちの熱気であふれていました。4回にもわたる予選を突破してきた代表チームは、全国6ブロック内における12校(施設)。開会前の準備時間では、代表チームだけでなくメディアの方々も頻繁に会場に出入りしており、大会への注目度が伺えました。開会式では審査委員長の銭谷眞美さんから各チームへのお祝いの言葉や、「学校給食を通じて食育を広げる」といった大会の趣旨が語られると、代表チームの方々も背筋を伸ばし、気持ちを奮い立たせているようでした。開会式終了後、競技開始1分前のカウントが始まるとメンバー同士で声をかけ合い、最後の確認を行う姿も。そして、ついに1時間におよぶ戦いの火蓋が切って落とされました。

画像: 選手宣誓を行った中国・四国ブロック代表(広島県)の杉信龍哉さん

選手宣誓を行った中国・四国ブロック代表(広島県)の杉信龍哉さん

調理室は包丁や水、油の音など、一気に活気であふれかえります。その中でも特に印象的だったのが、各チームが工程を確認するために行う声かけです。大会の調理は栄養教諭(学校栄養職員)と調理員の2人1組で行われ、献立の味や見た目、栄養バランスはもちろん、衛生管理や作業効率も細かく評価されます。子どもたちの食育のため、いかなる点でも妥協が許されないのが学校給食。そのため、各チームはお互いが今何を始め、終わらせたのかを逐一共有し、最大限にパフォーマンスを発揮できるようにするのです。

画像: 終了時間が刻一刻と迫る中、落ち着いて調理を行う各チーム

終了時間が刻一刻と迫る中、落ち着いて調理を行う各チーム

時間が経つにつれ、美味しそうな匂いが調理室中に漂い始めます。各メニューの仕上げを進めながら、同時進行で配膳や片付けも行う各チーム。具材のバランスや配膳まで細かくチェックする石川県や岐阜県代表、最後まで明るく元気に工程を進める千葉県や兵庫県代表など、終盤になるにつれ各チームの個性が表れていたように感じました。そして、ジャスト1時間。戦いの終わりを告げるタイマーの音が鳴り響き、調理室には安堵や喜び、悔しさなど、さまざまな空気が流れていました。

画像: 思わずチームメイトとハイタッチする姿も

思わずチームメイトとハイタッチする姿も

画像: 真剣な面持ちで見栄えや配膳をチェックする審査委員

真剣な面持ちで見栄えや配膳をチェックする審査委員

画像: 各チームの創意工夫に感心すると語った審査副委員長の香川明夫さん

各チームの創意工夫に感心すると語った審査副委員長の香川明夫さん

「給食日本一」の栄冠を手にしたチームは

表彰式は、駒込から丸の内に場所を移して行われました。きらびやかな会場では、調理服から式典用の装いに着替えた代表チームの面々が、結果を今か今かと待ちわびています。まずは優秀賞、各種特別賞が発表されるたび、大きな喜びの声や拍手が上がりました。
そして、残すは準優勝と優勝の発表のみに。これまで以上に緊張感が会場を包みます。準優勝に読み上げられたのは——香川県の高松市立香南学校給食共同調理場!壇上に上がる栄養教諭の谷西真理子さんと調理員の森下貴子さんの目には、涙が光っていました。聞くところによると、香川県チームは前日に地元の食材が届かないというトラブルに見舞われ、献立の変更を余儀なくされたのだとか。大きな困難をアイデアをもって乗り越え、当日も明るく元気に調理へ取り組み、質の高い献立を仕上げた姿には、多くの審査委員が心を動かされたそうです。

画像: あきらめずに最後まで笑顔で取り組んだと語った谷西さん

あきらめずに最後まで笑顔で取り組んだと語った谷西さん

画像: 「こんな華々しいことが起こるなんて」と声を詰まらせる森下さん

「こんな華々しいことが起こるなんて」と声を詰まらせる森下さん

そして、全国1,051にもおよぶ応募の中から、日本一の献立に選ばれたのは——石川県立明和特別支援学校!今日一番の歓声や拍手が、ホール中に鳴り響きます。壇上で真っ赤な優勝旗を手にした学校栄養職員の岡春菜さんは、満面の笑みを浮かべながら「まったく予想していなかったので感激しています。生徒たちや地域の方々の支えがあって成し遂げられたので、皆さんに感謝したいです」と語りました。また、調理員の岩岸美加恵さんも、「いろいろな提案をしてくれた生徒に感謝したいです、喜んでくれると思います」と感激した様子をあらわにしていました。

画像: 優勝は予想外だったと、喜びを隠しきれない様子の岡さん

優勝は予想外だったと、喜びを隠しきれない様子の岡さん

画像: 最後まで生徒たちへの感謝を語った岩岸さん

最後まで生徒たちへの感謝を語った岩岸さん

表彰式の最後は、本大会を主催する認定NPO法人21世紀構想研究会の理事長、馬場錬成さんのスピーチで締めくくられました。各チームへの労いやトラブルを乗り越えた香川県チームへの賞賛はもちろん、AI社会の到来についてのお話もされていました。実際にご自身も生成AIを駆使しながら今回の応募書類の整理を行ったらしく、応募側にも時代の流れを踏まえ、技術を用いた挑戦を期待されていました。最後に、来年の第20回大会という節目に希望を寄せる言葉をもって、第19回全国学校給食甲子園は閉会しました。

画像: 馬場さんのスピーチには次の時代を見据える先見性が感じられた

馬場さんのスピーチには次の時代を見据える先見性が感じられた

学校給食を通じた食育の輪を、もっと広げるために

閉会後には、21世紀構想研究会の事務局長、峯島朋子さんからもコメントをいただきました。

峯島さん:「学校給食を通した食育の大切さを、本大会を通じてお伝えできたかと思います。JKA様の補助事業に関するテーマの一つにも、“人生100年時代をどう生きるか”というものがありますよね。そのテーマと本大会の趣旨は重なる部分があり、応募させていただきました。子どもたちに正しい食の知識を届けることで、大人になってもその大切さを思い出すことができると考えています。また、日本のように、全国で摂取基準を満たした給食を提供している国は多くありません。そこは今後の日本における国際的な力にもなると思いますし、実際に台湾は日本の食育に共感しています。本大会も今後はアジアにも目を向けて、国際交流にもつながる大会にしていきたいですね」

画像: 次の大会に向け、峯島さんの中にはアイデアがあふれているようだった

次の大会に向け、峯島さんの中にはアイデアがあふれているようだった

給食を通じた食育は、今後日本だけでなく、世界の未来にも良い影響を与える取り組みになりそうだと、期待や可能性を感じられた大会になりました。

画像: 学校給食を通じた食育の輪を、もっと広げるために

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