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youtu.be競輪とオートレースの補助事業がこの研究を支援していると知り、オートレーサーの早川清太郎選手が「一体どんなロボットが開発されているのだろう」と東北大学の宇宙ロボット研究室を訪ねました。
月を縦横無尽に進む!?宇宙ロボットの開発現場へ
宇野さん:「早川選手、初めまして!今日は私たちがどんな研究をしているのかご紹介しますね。ゆっくり見ていってください」
研究室を訪れた早川選手を迎えてくれる宇野さん。彼が開発を進めるのは「ピン配列型把持機構」というメカニズムを持つロボット。聞き馴染みのない言葉に早川選手は興味を示します。
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東北大学の宇野助教(左)とオートレーサーの早川選手(右)
早速、開発中のロボットを見せてもらいました。
宇野さん:「月を探査するロボットと言えば自動車のような車輪型のロボットをイメージする方も多いと思います。でも、このロボットは車輪ではなく細長いピンをたくさん有しているんです。月面や活火山付近といった凹凸した地形に合わせてこのピンをなじませて掴み、縦横無尽に進む仕組みになっています」
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早川選手:「不思議なかたちですね。どうしてこの形状にしようと思ったのですか?」
宇野さん:「最初は人の“手”に似た構造にしようとしていました。でも、手は岩などの出っぱった部分を掴むのは簡単にできるものの、くぼんだ部分を掴むのが難しいという課題があります。月の凸凹した地形を進むにはどんな形状が最適かを考えるうちに、学生の一人が“型取りゲージ”から着想を得て、今の機構の原型を提案してくれたんです」
型取りゲージとは、壁紙を貼る際などに扉や柱、エアコンや家具といった室内の形状を測る工具のこと。針がいくつも並ぶ型取りゲージの構造は確かに宇野さんが開発しているロボットと似ています。何度もディスカッションを繰り返しながら、今のかたちになったそうです。
早川選手:「型取りゲージから始まってこんな姿になるとは……おもしろいですね!」
どんな複雑な地形も、ピンを動かし自在に進む
ピンの先端をよく見ると、金属製の小さなクギが何本もありました。このクギが爪の役割を果たし、地形をグッと挟み込むように掴んで前進します。
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ピンを地形にフィットさせながら前進するロボット。同時に地形データの取得も行います
早川選手:「ピンの爪を岩などに引っかけることで、凸凹した地形や傾斜の高い場所も落ちずに進めるんですね。岩は硬いからピンも挟みやすそうですが、例えば柔らかいものを掴んだり、ツルツルした場所を進んだりはできるのでしょうか?」
宇野さん:「爪部分をクギではなくゴムなどの素材に変えれば、柔らかくてツルツルしたものもグリップできると考えています。このロボットは月や火口付近などの岩石地帯での移動を主に想定して開発してきましたが、技術が確立すればジャガイモなどのゴツゴツした野菜や、りんごのようなツルツルした果物の仕分け作業にも応用できると思います」
現在、手作業で行っている現場が多い農産物の仕分け。このロボットがその作業を担えるようになれば、人手不足の解消や農産業の活性化にもつながりそうです。
未知を開拓する技術で、社会に貢献を
早川選手:「このロボットが完成すれば、他にどんなことが可能になりますか?」
宇野さん:「月には未開拓の領域がたくさんあります。複雑な地形をした洞窟やどれほどの深さかわからない洞穴……そういった場所へ最初に辿り着くロボットをつくるのが僕たちの夢です。技術が確立すれば未開拓エリアの地形サンプルを採取したり、詳細な地形データを収集できたりするようになります。そうなれば、宇宙に関する研究も飛躍するでしょう。また、月面探査の技術は地球上でも応用できます。活火山や渓谷、深海などの極限環境は、ドローンや水中カメラで撮影はできても、詳細な地形や地層内部の状態を調べることは十分にできていません。そういった場所の土や石の採取も可能になります」
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早川選手:「撮影した写真を調べるのと実際のサンプルを解析するのとでは、得られる情報量が大きく変わりそうですね!」
宇野さん:「そうなんです。それから、地震などの災害現場でも活用させたいですね。ロボットが人の立ち入りが困難な瓦礫の奥へと進んでレスキュー活動の支援を行ったり、救助が困難な場所へ援助物資を届けたり……僕たちは常々、人ができないことを手助けするのがロボットの役割だと考えています。社会で役立つロボットをつくるためにも、今後も研究を続けたいです」
宇宙で活動するための技術を、地球や社会に貢献できる技術に変えていく。その流れが確立すれば、私たちの生活もより便利になりそうです。
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より安定した移動を目指して、モジュールを3つから4つに増やした改良版ロボット
宇宙を目指す、勝利を目指す……互いの勇姿に励まされて
その後、実際にロボットを動かしてみたり、大学内を案内してもらったりしながら交流を深める早川選手と宇野さん。一段落したタイミングで、研究室に所属する学生のみなさんも含めた座談会を行いました。
早川選手:「僕も少年の頃、ロボットコンテストなどをTVで見て憧れていたんですよ。今日の訪問を通じて、幼い頃の憧れを思い出せました。事前に“月を移動するロボット”だと聞いていたのでタイヤを使っているのかと思っていましたが、まさかの型取りゲージ!みなさんの柔軟な発想に驚かされました」
宇野さん:「ありがとうございます!僕たちの研究は競輪とオートレースの補助事業にも応援していただいています。そのおかげで、本体に取り付けるモーターや基盤、細かな部品やパソコンなど必要な物資が購入できているんです。ロボット開発には大きな予算がかかるため、日々とても助かっています」
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大学の休憩スペースで談笑する早川選手と宇野さん、研究室に所属する学生メンバー
早川選手:「競輪とオートレースの補助事業があるのはもちろん知っていました。でも、どんな風に使われているのか、誰の役に立っているのかなど細かなところまでは把握できていなかったんです。だから今日、宇野さんたちが開発したロボットが世の中にどう役立っていくのかお話が聞けて、誇らしく感じました」
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学生さん:「宇野さんはよく、“宇宙を目指して、最終的には地球へ還元する”と言っていますね。僕たちも、“この研究によって生まれた技術が、思いもよらないかたちで社会に適応することもある。とにかく全力で取り組もう”そんな風にいつも話しています。これからも研究を進め、みなさんの生活に役立つような技術につなげたいと思います」
ちなみに、宇野さんも学生のみなさんもオートレーサーを間近に見るのは初めてとのこと。「カッコイイです!」「僕もバイクや自動車が好きですが、あんな風に乗りこなして勝利を掴むなんて素晴らしいと思いました」など、早川選手の活躍についても感想を伝えてくれました。
宇野さん:「早川選手、今日はありがとうございました!これからもみんなで応援しています」
早川選手:「こちらこそありがとうございます。将来、みなさんのロボットが活躍して社会に貢献している姿を見るのが楽しみです。これからも頑張ってください!」
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オートレースと宇宙ロボット。一見すると関係なさそうですが、実は競輪とオートレースの補助事業を通じてつながっている。早川選手の訪問を通じて、そんな関係性が垣間見えました。社会のため、誰かのために頑張っている企業や人たちを応援するため、競輪とオートレースの補助事業はこれからも活動を続けていきます。
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